日本ビオトープ協会誌「ビオトープ」 No.7
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小学校では既に生活科が設けられ「総合的な学習の時間」がスケジュールの中に入り、平成14年度からは学校5日制が本格的に実施される。
こうした状況から、学校ビオトープの設置など学校環境の充実整備が緊急に求められている。そんな中、10年ほど前から毎年「全国トンボ・市民サミット」が開かれてきたし、横浜の小学校では何十ケ所もトンボ池づくりをすすめている。花壇、万葉植物園、岩石園、そして菜園と続く一連の学校園の潮流が、最近ようやくビオトープづくりに到達したということだろう。
ところで、ビオトープ計画で最も重要なことは「ビオトープ結合システム」の実現をめざすことというのが、造園学の常識である(詳しくは、日本造園学会編、ランドスケープ大系(5)『ランドスケープ・エコロジー』、技報堂出版、1999を参照されたい)。
私たちがよくつかう「ビオトープ・ネットワーク」のことである。武内・一ノ瀬によるとビオトープ結合システムの計画には、「結合(Biotopverbund)」と「接続(Biotopvernetzung)」の二つの方法がある。
前者は、空間を結合することで動物の移動を可能にする方法であり、後者は、生物にとって機能的に接続されるようにする方法である。
従って、大規模な自然保護地と市街地内のビオトープ同士はグリーンベルトや斜面林などで直接結合することはもちろん、飛石状にあるいは回廊状(コリドー)に間接的に接続するのもよい。都市化がすすんだ既成市街地では、地域の自然環境の条件に大きなちがいがある。自然地、緑地、農地、公園、並木、庭などの種類と分布がバラバラである。しかし、これを何らかの形で結合したり接続したりすればいい。線でいえば、実線でも一点鎖線でも二点鎖線でも破線でもよいし、また太線でも細線でもよい。
学校や公園にトンボ池を造ること。公園には多様な植物を植えること。住宅庭園でも雨水を浸透させ、野草や雑木を植えること。ビルの屋上や壁面も緑化すること。マンションのベランダでもハーブや花を栽培すること。わが家のパーキングの舗装をはがして芝生に変えること、等々。
それぞれ自分がやれるところでビオトープづくりを目指すことにする。これを結合し接続することで、地域全体がビオトーブ結合システム(Biotopverbundsystem)でつつまれることになる。
残念なことに日本では、「・・・ドイツでは」とか「ビオトープと呼ぱれる・・・」とか、大袈裟な物言いをしないと当たり前のことさえすすまない事情がある。
元来、人間の棲む環境空間は何処もがビオトープでなければならない。そして、そのことは日本人が皆んなわかっていたことでもあった。江戸の下町は、過密な集住地であったが、9尺2間の長屋でも路地には鉢植えが並べられ、壁はアサガオのツルでおおわれた。わずかな空き地には市の木が植えられ、冬にも野鳥が生きる糧となった。
それが現代の最先端を行く建築家や都市計画家の手になる「計画開発」のニュータウンや都市再開発計画地では、モダンなオフィスビル群にパブリック・アートが置かれるだけになっている。
人間も生物であることを忘れた専門家だけに都市づくりを任せておいてはいけないようである。
進士五十八(しんじいそや)
東京農業大学地域環境科学部長/地域環境科学部造園科学科教授
(農学博士/造園学・環境計画学・景観政策学)
略歴
1944年 京都生まれ
1969年 東京農業大学農学部造園学科卒業
1969年 東京農業大学農学部助手
1982年 東京農業大学農学部助教授
1984年 第5回田村賞 受賞
1986年 農学博士
1987年 東京農業大学農学部教授(1998年より地域環境科学部教授、現在に至る)
1989年 平成元年度日本造園学会賞 受賞
1993年 東京農業大学総合研究所長
1995年 東京農業大学農学部長
1998年 東京農業大学地域環境科学部長、現在に至る
1998年 東京農業大学地域環境研究所長、現在に至る
現在
日本造園学会副会長、 日本都市計画学会理事、 自治体学会企画部会長、 日本環境教育学会運営委員、 国土庁国土審議会特別委員、 北海道開発審議会特別委員、 建設省都市計画中央審議会専門委員、 建設省河川審議会専門委員、 環境庁アメニティ優良地方公共団体表彰選考委員、 東京都景観審議会計画部会長、神奈川県総合計画審議会、 同環境政策懇話会委員、 静岡県文化財保護審議会委員、 東京都特別区政懇談会委員、 豊島区アメニティ形成審議会会長、 新宿区景観審議会会長、 三鷹市まちづくり推進委員会委員長、 川崎市公園緑地審議会会長、 同自然環境保全審議会副会長、 千代田区景観まちづくり審議会副会長、 名古屋市・藤沢市景観審議会委員、 横浜市緑の環境整備審議会委員、 世田谷区環境審議会委員、 毎日新聞社21世紀危機警告委員会技術評価委員、 環境事業団地球環境基金助成専門委員会委員、 女子美術大学大学院非常勤講師ほか。
主な著書
『アメニティ・デザイン ・ ほんとうの環境づくり』 学芸出版社
『ルーラル・ランドスケープ・デザインの手法』 学芸出版社
『緑のまちづくり学』 学芸出版社
『ランドスケーブを創る人たち』 プロセス・アーキテクチュア
『ランドスケーブ・アーキテクトの風景 - 造園技術の思想』 環境緑化新聞社
『自然環境復元の技術』 朝倉書店
『都市になぜ農地が必要か』 実教出版
『造園を読む - ランドスケーブの四季』 彰国社
『景観行政のすすめ』 日本都市センター
『日本庭園の特質 - 様式・空間・景観』 東京農業大学出版会
『ランドスケーブ大系第1巻 - ランドスケープの展関』 技報堂出版
『風景デザイン - 感性とボランティアのまちづくり』 学芸出版社 ほか多数
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