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日本ビオトープ協会誌「ビオトープ」 No.7


特別寄稿  屋上ビオガーデン  櫻井健二

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*画面中の画像をクリックすると、拡大された写真と写真の説明を見ることが出来ます。


1.計画の目的


 当社本店は名古屋港の東側の工業地帯に位置しています。
 近年、「自然との共生」の必要性が高まるなか、殺風景な都市環境での自然性の回復を目指す上で、屋上空間を多様な生物が生息できる緑地として有効に活用していくことが望まれるようになっています。
 そこで当社では、本店本館ビル屋上に「ビオトープ」の手法を取り入れ、「動植物の生態観察」と「社員の憩いの場」となる緑地を創造することとしました。




2.屋上ビオトープの内容


 6階建のビル屋上の一部(180m2)に、かつて広く農山村でみられた風景をモデルに、池、小川、水田、湿地、森を配し、メダカ、ドジョウ、カエル、ホタル、トンボ、チョウなどの様々な生物が生息できる空間として整備しました。
 屋上ビオトーブは、本店の北館ビル新築を機会に平成10年2月に着工し、防水・構造物等の工事は北館建設に携わる業者に委託して行ったほか、樹木等の植栽は社員の手造りにより行うなど、約5ケ月をかけ平成10年6月に完成しました。
 このビオトーブは、既存の緑地および広場を利用した部分(85m2)と、新たにコンクリート壁で囲って造成した部分(95m2)により構成されています。ビオトープの計画当初、荷重制限の問題がありましたが、既存の緑地とこれに隣接する部分(耐荷重0.5t/m2)を利用することで解決することができました。
 防水処理として、既存緑地内の小川はシート防水を、新設部分は全面にモルタル防水を施しており、陸域(植栽部)と水域(池・小川等)との境界はコンクリート防水壁により区画しています。
 池・小川等の水はポンプにより循環使用しており、蒸散等により減少した水は水道水により補給しています。
 循環ポンプは口径50mm、出力1.5kw、吐出量200 l/minを使用、雨水等の余剰水はオーバーフローにより排水しています。
 また、植栽部の客土および排水層に、火力発電所で発生する石炭灰(クリンカアッシュ)を有効に活用しています。


 (1)池・小川(50m2

 既存緑地内の小川は、幅25〜80cm、水深7〜15cmで、防水シートをヤシ繊維ネットで覆い、これに粘土を擦り込んで造成しました。小川内にはイトモ、コナギ等を、岸辺にはチゴザサ、チドメグサ等を植栽、メダカ、カワニナ等を放流しました。
 新設部分の池は、幅3m、水深20cm、底部客土は3cm程度とし、小川は幅0.6〜1.5m、水深10〜25cm、底部の客土厚は2〜10cmにしています。陸域と区画しているコンクリート壁を覆う形で、ヤシ繊維ロール、木杭、自然石を配し、多孔質な岸辺を形成しています。
 その岸辺には、セリ、クワイ、カンガレイ、イトモ、オオフサモ等を植栽しました。 池、小川にはメダカ、ニッポンバラタナゴ、カワバタモロコ、ドジョウ、タニシ等を放流し、同時にトンボ等の昆虫の自然飛来を期待しています。

 (2)水田(9m2

 水田の客土は、最下層にクリンカアッシュ5cm、田土17cmを入れ、水深は5cmにしています。
 イネをはじめ、コナギ、ミズオオバコ等の水田雑草を植栽し、タニシ、ホウネンエビ等を放流しています。
 また、収穫後の水田にはレンゲの種を播き、春の開花を待っています。

 (3)湿地(6m2

 水田と同様に、客士は最下層にクリンカアッシユ5cm、田土17cmを入れ、中央に水深5cm、幅40cmの流路を造成しています。そこにヒメガマ、サンカクイ、カワヤナギ等を植栽しています。

 (4)植栽部(55m2

 客士厚30〜40cm。客土はクリンカアッシュ4割に、赤玉土、バーク堆肥等を混合しています。また、最下層には排水層としてクリンカアッシユを厚5cmで敷均しています。
 エノキ、アベマキ、サンショウ、ネムノキ等昆虫類の蜜源や食草となる植物を中心に、シデコブシ等の地域の貴重な植物を植栽しました。

 (5)ネットゲージ(高4m、50m2

 ビオトープの一部にネットゲージを設置し、蝶やトンボ、ホタル、カブトムシ等の生息・繁殖環境を創出するとともに、それらの観察施設として活用していくこととしています。

 (6)観察広場(60m2

 藤棚、ベンチを有する既設の広場(インターロッキングブロック舗装)を利用し、ビオトープの観察場と休憩場を兼ねた施設として利用しています。

 (7)その他

 ビオトープに隣接する既存のゴルフ練習ネットを利用し、蝶の幼虫の食草となるヤブガラシやカラスウリ等のつる性植物を這わせたり、壁面沿いに蜜源や食草となる植物を植えたプランターを並べるなど、立体的な植栽を試みています。
 また、野鳥を誘致するため、小鳥用の餌台を設置しました。





3.ビオトープ整備後の状況


 この屋上ビオトープでは、都市部の自然環境復元に寄与する施設として、主に名古屋市近郊の農山村部に生育・生息している動植物を中心に様々な生物を放育・植栽しています。
 これまでに、約40種の動物を放育しており、メダカ、ニッポンバラタナゴ、ドジョウ等の魚類やタニシ、モノアラガイ等の貝類が順調に繁殖しているほか、トノサマガエル、ツチガエル等のオタマジャクシも順調にカエルになっています。
 植栽した樹木や草本類も定着しており、約90種の植物を確認しています。
 しかし整備後間もないこともあり下草の繁茂は少なく、カエルの餌となるような小さい昆虫類はまだまだ少ないようです。来春以降の植物の生育が待たれるところです。
 一方で、工場地帯という自然の乏しい立地条件にありながら、夏季にはシオカラトンボ、ギンヤンマ等のトンボ類が飛来し産卵する姿を観察することができたほか、アゲハ、モンシロチョウ、イチモンジセセリ等の蝶類やアブラゼミ、クマゼミといった昆虫を見ることができました。鳥類では、年間を通してスズメ、キジバト、ハクセキレイの餌を取る様子が見られます。
 また、ビオトープ整備時の5月に水田に植えたコシヒカリの苗も9月には収穫期を迎え、社員による稲刈りを行うなど、四季の移ろいを感じさせる緑地となっています。




4.今後の取り組み


 屋上ビオトープは、完成後、9ケ月が経過した段階であり、ようやく四季による状況変化がわかり始めたところです。
 真夏には最高水温が30度をこえたほか、アオミドロの繁茂が目立ちました。また、2月の大雪の際は池全体が二日間凍結した状態になりました。その他、年間を通して風が強いなど、ビルの屋上特有の環境条件も持っています。今後は、このような都市環境でのビオトープ整備の手法やその管理方法について探求していきたいと思います。
 また、ネットゲージ内では現在カブトムシやへイケボタルを放し、その繁殖を試みているほか、今後は、昆虫の食草となる植物等の充実を図り、オオムラサキやギフチョウ等の生息・繁殖環境を整備していくなど、より自然性の高いビオトープを目指していきたいと思います。





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