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21世紀に入り、生物とその環境が人間生活を支える重要な社会基盤(エコ・インフラ)であることが広く認識されてきている。そして、ビオトープ協会が目指す自然環境の保全と復元に関して、単なる啓蒙活動ではなく、固有の地域環境を踏まえたミティゲーション(環境復元)事業への貢献へと踏み込んでいくことが必要に思われる。海外事例を通して、21世紀のビオトープがミティゲーション事業と発展していく方向性を感じていただければ幸いである。
ヴェトナムの枯葉作戦その後
2001年6月にヴェトナム南部のマングローブ調査に出かける機会があった。ホーチミンシティに隣接するサイゴン川河口部のカンザ地区は、かって広大な面積のマングローブ林に覆われていたが、四半世紀以上前に9万キロリットル以上の枯葉剤・除草剤が散布され、マングローブ林が消滅している。枯葉剤に含まれていたダイオキシンによる人体への影響と枯葉剤で消えたマングローブは、写真で世界中に紹介されている(写真1)。
今回調査に訪れたカンザ地区は、写真で知るヴェトナム戦争直後の荒廃した姿の面影をまったく残さないマングローブ林が広がる緑の海であった。再生されたマングローブ林とは思えない素晴しい生態系であった。四半世紀の年月をかけて地域の人びと(人民委員会)そして最近は日本のアクトマンなどが地道な植林事業を続けた成果である。1970年代半ばにRhizophoraの苗木が植えられた土地は、現在15−20mの森を形成しており、様々な動植物の繁殖・生育の場となっている。また、マングローブの再生地に接してニッパ椰子の栽培も行われている。マングローブ域に生育するニッパ椰子は、葉、茎、種子などが経済的価値のある有用植物である。
マングローブ林の中に設けられていたゲリラ基地は1960年台半ばに破壊され、完全な裸地と化した。そして、戦争が終結しない1968年から人々がマングローブの植林を始めており、すでに写真2の状態にまで森が回復している。現在、地域一帯が森林公園に指定され、林間学校の施設が設けられ、ゲリラ基地跡と再生マングローブ林は遊覧ボートによるエコツアーコースとなり、有名な観光スポットとなっている。
ミティゲーション
最近、自然環境復元に関してミティゲーションという言葉が使われている。ミティゲーションは、開発に際して保護保全の対象となる自然環境・生態系への影響が予測される際に取る対応策のことである。開発計画を変更して生態系への影響を回避するレベルのものから生態系への影響を回避できないため別の場所にビオトープを代償的に設けるレベルのものまである。もっとも、どのレベルのものであっても、NO-NET-LOSS原則(生態系の質的低下が避けられない場合には、代償されるビオトープはより広い面積が必要となる)が求められる。ミティゲーション事業では、ビオトープが地域固有性を反映した生物相の導入や遺伝子資源の保全を考え、流域内からの生物導入に限定する主張も出ている。
ヴェトナムのマングローブ再生事業を海外の壮大なミティゲーション事業の事例として見てみると、今後私達が取り組むべきビオトープがミティゲーション事業へと発展させていく必要性が理解できる。ヴェトナムの事例では、自然環境が荒廃した時点(枯葉作戦で裸地化)から始められ現在も続けられている長期的な事業である点と人間活動との接点を考えた事業としている点をあげることが出来る。後者に関しては、単なる環境保全だけを考えたマングローブ林再生ではなく、ニッパ椰子という有用植物の導入、エコツーリズムなどに結び付けていることである。さらに、人民委員会が植林・環境再生のノウハウを持ち、地元の人々のコラボレーションを組織し、地域環境の再生と人々の生活との調和を常に考えて行われている。
本協会が、21世紀に向けた活動として、ミティゲーション事業のノウハウと技術を有する人材育成(講習会、技術資格認定など)に努力をされ、ミティゲーション/ビオトープの施工事例に対して主体的に評価し、事業認定をする制度を設けるなどの環境貢献を積極的に行ってはどうだろうか
写真1 1976年に撮影されたマングローブ林
跡地(中村梧郎『戦場の枯葉剤』1995より)
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写真2 2001年に撮影した再生マングローブ林
(1と同じカマウ地区、ベトコン基地跡地)
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