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日本ビオトープ協会誌2002ビオトープNo.12

学校ビオトープの創り方

東京農業大学長・農学博士
進士五十八
(日本ビオトープ協会顧問)
 超党派の議員立法で成立を目指していた「自然再生促進法」が、民主党が同意せず7月国会への提出が見送られてしまった。公共事業予算を守るための方便では?とか、本当に自然再生のためになるのか?とかの理由という。本法案の意義を感じ、内容へのアドバイスも口にした私としては誠に残念だ。
どうして政治家は"自然"に対してまで、いわゆる汚い目でしか見られないのか。自然再生のためにならないと疑るのなら、どこをどう変え、どこにどういうチェックをいれよとシステム提案をすればよい。そういう代替案さえ思い浮かばないほど、ひょっとすると"自然"に無知なのか。それとも政争の具として利用しているのか。少なくとも、未来の日本を形づくる自然再生の問題ぐらいは超党派で取り組んで欲しいものである。

 ところで、政治家に限らず"自然"への理解度は、幼年期の"自然体験"の多寡に比例するように思う。大都市出身の2世3世議員は、地方の実情も自然の体験も十分ではないのだろう。自然再生の目標は、列島改造ブーム以前の日本の農山漁村の環境状態に近づけると考えれば、誰にもわかる。その方法は、大型機械導入以前の"百姓のデザイン"によればよい。自然の地形や水利を出来だけ生かして農地農村を整備する伝統的技術を活用すればよいのである。溜池、土手、棚田、石垣、農道、屋敷林。いずれも、自然共生、環境共生、地域色第一の百姓のデザインである。

 かつて私は、本協会誌No.7の巻頭言に「学校から公園、そして地域全体へ」と、いわゆるビオトープ・ネットワーク(Biotopverbundsystem、ビオトープ統合システム)の意義を述べた。小学校区に1ヶ所以上の小中高などの学校ビオトープは、地域全体の中で頼り甲斐のある存在だ。どんなに人工環境化した大都市部であっても学校の無い地域はない。学校にビオトープを造ろうという意義の第一は、こうした配置論から説明できるのである。
しかし私は、ここで学校ビオトープの意義をもうひとつ加えたい。ビオトープ創りを通じて、またビオトープの維持管理、観察、記録を通じて"自然"を体験することの重要性をである。
これまた大都市の中で、"自然"とか"緑"といっても、いわゆる都市公園やビルの外構植栽、花で飾られたガーデニング スペースとしか触れ合ったことのない現代っ子たちにとって、学校ビオトープは唯一の野生自然体験ということになろう。

 当然のことながら、創作段階から参加させること。肉体的体験も要である。ビオトープが、理科とか生物の先生の専売特許だと思ったら大間違。屋上に水槽を運んだり、岩石園を兼ねて、セメント、モルタル工事にチャレンジすることも大切だ。汗をかき重いものを運び、レンガを積んだり、防水シートを敷いたり、水の浄化を考えたりすることも、環境教育の大切な要素である。
水底に粘土を入れ、草を植えるとき、人為的に二次自然を造ることの大切さ、本物の自然との差異なども自覚できる。石、土、水、生物………といったものの性質のちがいも、分かってくる。魚介類や貝類、藻類の生存環境を学習することもできる。

 いわゆる単一種目を分類学的に教わるやり方とは全くちがう、いわば石、土、水などから動植物に到る生物的自然全体の生態学的な見方を学ぶことができる。
できれば、その全体風景が美しくまとめられれば最高である。草本、木本、水、土、岩、そこでの生物相のすべてが、いかにもそれぞれの場所にふさわしく存在するようなビオトープにこそアメニティをも感じる。「美しい絵」を描いた上でそういうビオトープづくりをすすめて欲しい。プロの造園家が指導しての手作り学校ビオトープなら、この方法も夢ではないし、子供たちは知性のみならず感性をも手にできる。


 
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